こんにちは、こんばんは。
臘月堂、主人の南(@lowgetsudou)です🌙
今日は『エイリアン: コヴェナント』の話。
作品情報
エイリアン: コヴェナント
(原題:Alien: Covenant)
- 製作:2017年/アメリカ・イギリス/122分
- 監督:リドリー・スコット
- 出演:マイケル・ファスベンダー/キャサリン・ウォーターストン/ビリー・クラダップ/カルメン・イジョゴ
- 脚本:ジョン・ローガン
- 撮影:ダリウス・ウォルスキー
- 編集:ピエトロ・スカリア
- 音楽:ジェド・カーゼル
予告編
レビュー
前作『プロメテウス』で提示された「親殺し」というテーマを、いっそう深く掘り下げたのが本作だ。
冒頭からワーグナーにフランチェスカの絵画にダビデ像と、ペダンチックで大仰な象徴アイテムのたたみかけ。
続いてバイロン、シェリー、ベクシンスキー、ポンペイ大噴火と、リドリー・スコットの老いてなお盛んな美意識がこれでもかと詰め込まれた2時間に、最後まで気圧されっぱなしだった。
監督の「ヴァルハラ(わしの脳内)にようこそ!」という声が聞こえてくるようだ。
「エンジニア > 人間 > アンドロイド > エイリアン」
という主従関係は、
「造物主 > 被造物1 > 被造物1が生んだ被造物2」
という本質に当てはまる。
それは本作の下敷きになった色々な物語とも一致する要素だ。
例えば
①ミルトン『失楽園』における
神様 > サタン > 人間
の関係
②シェリーの奥さんメアリ・シェリーが著した『フランケンシュタイン博士の怪物』における
神様 > 人間 > 博士の怪物
の関係
③ギリシャ神話の
ゼウス > プロメテウス > 人間
の関係
④『2001年宇宙の旅』における
宇宙人 > 人間
の関係
⑤ヴォネガット『スローターハウス5』などに登場する
トラルファマドール星人 > 人間
の関係
⑥ハインライン『幼年期の終わり』における
オーヴァーマインド > オーヴァーロード > 人間
の関係
など枚挙に遑がない。
リドリー・スコットが製作に回った『ブレードランナー2049』の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴも同じテーマを扱っている。
テッド・チャン原作『メッセージ』の
ヘプタポッド > 人間
の関係がそうだ。
グノーシス思想やボルヘス『円環の廃墟』などもベースにあるだろう。
『コヴェナント』におけるエイリアンは
「現行の社会秩序をおびやかす得体の知れない存在」
としての"子供"を、旧体制の安寧に浴する"大人"の目線から、シンボリックに表現した存在と言える。
(血まみれグチョグチョ内臓ドバドバ描写が続くためテーマを忘れそうになるが)
『オーメン』のダミアン
『エクソシスト』のリーガン
『ローズマリーの赤ちゃん』の赤ちゃん
『イレイザーヘッド』のスパイク
などと同じくゼノモーフのヴィジュアルもまた、
「支配者側の主観ではこんなにグロテスクに見える」
という、表現主義的な意味を見出すことも可能だ。
(デザインしたギーガーがそんな事を考えていたかは別にして)
多くが反体制側の目線から描かれるアメリカンニューシネマとは逆の視点。
そして「エイリアン = レプリカント」という構図もまた今作でハッキリしたわけだ。
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