映画『ジャスティス』(1979)レビュー

映画

こんにちは。臘月堂(@Lowgetsudou)です。

今日は『ジャスティス』(1979)の話。

作品情報

ジャスティス

(原題:...And Justice for All)

  • 製作:1979年/アメリカ/119分
  • 監督:ノーマン・ジュイソン
  • 出演:アル・パチーノ/ジャック・ウォーデン/ジョン・フォーサイス/リー・ストラスバーグ/ジェフリー・タンバー
  • 脚本:バリー・レヴィンソン
  • 撮影:ヴィクター・J・ケンパー
  • 音楽:デイヴ・グルーシン

予告編

レビュー

悪代官がヨコだと言えば、タテのものでもヨコになる。

正義の弁護士アル・パチーノが法曹界の腐敗をぶっ叩く、血湧き肉躍る法廷劇!

メタリカのアルバムタイトルの由来にもなった今作は、一本筋の通った物語というよりは散文的な構成。

たしかにキャラ立ちした人物が多くって、それぞれに印象的なエピソードが用意されているため、散漫な印象を与えるのは致し方ない。

とはいえ、

「法律家が法律をもてあそび、あるいは法律にもてあそばれることで、法律家自身や関わる人々の人生がどう変化してしまうのか」

「法律 = 正義と盲信することがどれだけ危険なのか」

それを受け手に問いかけるため短いエピソードを豊富に用意したのは効果的だ。

アル・パチーノだけでなく

精神崩壊した相棒の弁護士、

黒人のニューハーフ、

自殺癖のある判事、

誰もが主人公になり得る群像劇として観るとちょうど良い。

とりわけ濡れ衣を着せられたあの青年。

法に関するリテラシーを身につけず法律家のなすがままにしていると、誰だっていつ彼のようになっても不思議じゃない。

私も痴漢冤罪とかすごく怖い。

その意味で、映画を観る私たちもまたアンサンブルキャストの一人と言える。

作品の冒頭と中盤、ラストで使われるカツラは、"法による守護"を象徴するアイテムか。

つまり「カツラを外せ」とは、「お前は法によって守られない」という宣告。

相棒の弁護士がスキンヘッドにしたのは「法律の正義を信じられなくなった」ことの証で、

彼が最後に気が狂ったままカツラを付けて職務に戻ったのは

「人格的に不安定な人間でも法の名の下に人を裁くことができる」

ことに対する皮肉に思える。

プレッシャーとハードワークと無力感にさいなまれ心が壊れていく仕事人たちの姿に、スコセッシの『救命士』を思い出した。

とりわけアル・パチーノが自殺癖を持つ判事と一緒にヘリに乗せられるシーンは、疲れきったニコラス・ケイジとジョン・グッドマンが救急車で語り合うシーンを彷彿とさせる。

それにしても『ゴッドファーザー part 3』しかり『スケアクロウ』しかり、

「信じた道をひた走った結果、手に入れたのは絶望と虚脱感だけで頭がおかしくなっちゃった」男の演技はアル・パチーノの面目躍如たるところ。

"失望で茫然自失になった弁護士"を捉えるラストシーンと言えば、リチャード・ギアの『真実の行方』も忘れがたい。

しかもストップモーションにデイブ・グルーシンのスコアという激シブ演出も加わり、まるで『コンドル』のラストみたいでカッコいい。

ものの見事に精神的に安定した人物が一人も出てこない点もお気に入り。

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