映画『アナイアレイション -全滅領域-』レビュー

映画

作品情報

アナイアレイション -全滅領域-

(原題:Annihilation)

  • 製作:2017年/アメリカ/115分
  • 監督・脚本:アレックス・ガーランド
  • 出演:ナタリー・ポートマン/オスカー・アイザック/ジェニファー・ジェイソン・リー
  • 原作:ジェフ・ヴァンダミア『全滅領域』

予告編

レビュー

こんにちは、こんばんは。

臘月堂、主人の南(@lowgetsudou)です🌙

スラッシュメタルバンドのアナイアレーターと似た名前のタイトルをたまたまNetflixで見つけて鑑賞しました。

原作者が20年近く探検してるフロリダのSt. Marks鳥獣保護区が、今作のArea X(シマー領域)のヒントになったそう。物語のキーとなる灯台も実在する。

保護区内の密生した木々の中で川下りしてる最中、激しい雷雨に襲われた原作者氏。

「うっお進むべき方向が全く分からんくなった!怖っ!怖っ!」

という恐怖体験をし、Area Xに入ると現在地が分からなくなる設定に活かされたとか。

謎だらけな展開だけでなく、ビジュアルのインパクトが何より強烈な映画です。

がん細胞のメタファーと思しき "シマー" に影響された動植物たちの異様な造形。

そして自然の造形。

その対比が現代アートのインスタレーションを観てるようです。

とりわけパステルカラーでカラフルなのに、菌類を思わせるグロテスクなテクスチャーをした壁面デザイン

これがまるで真島直子さんやジェームズ・アンソールの絵画そのもので、気色悪いったらありません(大好き)

そしてテーマ面。

アレックス・ガーランド監督は手がけた作品がまだ少ないながら、一貫した問題提起を繰り返しています。

すなわち

「人間とそれ以外の存在を区別する決め手は何なのか?」

という疑問です。

『わたしを離さないで』におけるクローン人間、

『エクスマキナ』におけるAI

それらに続き、今作でテーマを語るための事例として扱われるもの。

それが

「アポトーシスを繰り返して細胞レベルでは全く別人になった肉体

です。

「現実と夢の境目が曖昧ならば、何によって人間は自己のアイデンティティを確立すれば良いのか?」

そのテーマを『円環の廃墟』で打ち出したボルヘスに、『アナイアレイション 』の原作者はよく例えられます。

その題材をアレックス・ガーランドが映画化するのは作品の傾向から見ても必然性が高い。

また、『トータル・リコール』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』で同様の主題を繰り返したフィリップ・K・ディックとも重なります。

人間という存在の不確かさをSFという形式で語り、

重厚な映像と編集と音楽で仰々しく演出する。

アレックス・ガーランドの作家性が今後どのように展開していくのか楽しみです。

また今作が一作目であるサザンリーチ3部作は、すでにパラマウントによって映画化権が買い付けられています。

続きはいつどんな形で映像化されるのか楽しみ!

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