映画『ベン』はネズミが主役のアメリカンニューシネマ

映画

こんにちは、こんばんは。

臘月堂、主人の南(@lowgetsudou)です🌙

今日は『ベン』の話。

作品情報

ベン

(原題:Ben)

  • 製作:1972年/アメリカ/94分
  • 監督:フィル・カールソン
  • 出演:少年とネズミ
  • 脚本:ギルバート・ラルストン
  • 撮影:ラッセル・メティ
  • 編集:ハリー・ガースタッド
  • 音楽:ウォルター・シャルフ

予告編

レビュー

『ベン』が作られるしばらく前、1960年代はカウンターカルチャーの火が燃え盛った時代。

保守的な権力が牛耳る既存の社会に対し、抑圧されてきた少数派の人々が、積極的にNOを突きつけた時代。

弱者を搾取して甘い汁を吸ってきた類のWASPからすれば、社会的マイノリティー達は

「自分たちに襲いかかる得体の知れない恐怖の対象」としか映らなかったろう。

リーダーであるベンを中心として人間社会に反逆するネズミたちの暴動は、

キング牧師を中心に公民権の獲得を叫んだアフリカ系アメリカ人たちであり、

ハーヴェイ・ミルクを中心に差別撤廃を訴えた同性愛者のデモ行進であり、

ジャニス、ジミヘン、スライ、サンタナ、グレイトフルデッドなどロックスター達のもと、40万人以上のヒッピーが集結したウッドストックでもある。

また、ネズミ達を、ウィラードの邸宅という多文化圏から住宅街に流入してきた移民と見ることも可能だ。

そう捉えれば、トランプ政策の排他性やそれに靡くアメリカ人たちへの諷刺として、現代でもなお意味を増す映画だ。

普遍的なメッセージを秘めた隠れた名作と言う他ない。

そして今作の公開と同年、ニクソンが大統領に再選される。

大人に牙をむく若者たちの革命は終わりを告げた。

カウンターカルチャーの末路は、今作におけるネズミたちの最期とそっくり重ならないだろうか。

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