映画『散り行く花』レビュー

映画

作品情報

散り行く花

(原題:Broken Blossoms)

  • 製作:1919年/アメリカ/90分
  • 監督:D・W・グリフィス
  • 出演:リリアン・ギッシュ

レビュー

こんにちは。臘月堂(@Lowgetsudou)です。

度重なる親父のDVで心がすっかり死んでしまった女の子と、

故郷を捨ててロンドンに来たものの夢破れて中国人青年。

2人の不幸な人物による儚いラブロマンスが『散りゆく花』です。

ジム・ジャームッシュ監督に『ブロークン・フラワーズ』という映画がありましたが、こちらは『ブロークン・ブロッサムズ』。

ちなみに

"ブロッサム"は「果実を実らせる木の枝に咲いてる花」

”フラワー”は「地面から直接生えている草花」

という違い。

D・W・グリフィスは『國民の創生』『イントレランス』など、スケール壮大&ケレン味全開な作品のイメージが強い監督。

今作では舞台をロンドンの片隅に限定し、かつ2人の人間関係だけに焦点を絞った小さな恋物語。

背中を丸めてヨチヨチ何かに怯えるような歩き方、

他人の顔色をうかがう上目遣いなど、

不幸のどん底にある少女をリリアン・ギッシュが好演しています。

酒を飲んで帰ってきては大した理由もなく娘を殴りつける父親と、父親の暴力に恐怖し耐えながら粛々と家事を続ける少女という図式は、まるでゾラの『居酒屋』に登場するDV親父ビジャールとその娘ラリーです。

女性の社会的地位が以前と比べて向上した現代から見れば、

「可憐で、壊れやすく、弱々しい」

という女性像は古臭いステレオタイプに映るかも知れません。

実際、女性の社会的進出が目覚ましくなり始めるのは、『散りゆく花』が作られた1910年代の末頃から。

大戦中に海外出征していた男たちに代わり、国内に残って日々の仕事に取り組んできたのは、当然ながら女性たち。

彼女たちは「男がいなくても、私たちだって国のために貢献できるじゃないか」と自信をつけました。

当然の流れとして終戦後「女性にも政治に参加する権利を!」と多くの女性が声を上げ、それが受け入れられたのです。

女性参政権の実現はイギリスで1918年、アメリカで1919年。

そして1920年代の好景気の中で、「フラッパー」と呼ばれる自由奔放な女性たちがアメリカ文化を賑わし始めます。

1919年に作られた『散りゆく花』は、

「清楚で、控えめ、理不尽に対しても無抵抗で、弱い」

そんな19世紀的な女性像が散りゆく姿を図らずも捉えた作品のようにも思えます。

※終盤には『シャイニング』の有名シーンの引用元とおぼしきシーンも(そのまんま)

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