映画『ブルックリン』レビュー

映画

作品情報

ブルックリン

(原題:Brooklyn)

  • 製作:2015年/アイルランド・イギリス・カナダ/112分
  • 監督:ジョン・クローリー
  • 出演:シアーシャ・ローナン
  • 原作:コルム・トビーン『ブルックリン』
  • 脚本:ニック・ホーンビィ
  • 撮影:イヴ・ベランジェ
  • 編集:ジェイク・ロバーツ
  • 音楽:マイケル・ブルック

予告編

レビュー

「落ち込んだりもしたけれど、私は元気です」

『魔女の宅急便』

こんにちは。臘月堂(@Lowgetsudou)です。

青い瞳と物憂げな雰囲気が特徴的なシアーシャ・ローナン。

彼女が主演を務める『ブルックリン』を観た。

同じくニック・ホーンビィが脚本を手がけた『17歳の肖像』と同様、

新しい出会いや喪失など様々な経験を通して、

少女から女性へと変わっていく主人公の成長を描いた作品だ。

故郷は現状の自分を無条件に受け入れてくれる安全地帯であると同時に、

自分の成長をさまたげる危険なぬるま湯でもある。

19世紀半ば。
開発途中のNYにアイルランド人の居場所を確立しようと奮闘する移民青年を描いた『ギャング・オブ・ニューヨーク』

1980年代。
不景気のどん底に沈んだアイルランドで音楽に情熱を捧げる少年が、ついに故郷を捨てるまでを描いた『シングストリート』

そしてダブリンの貧困層の若者たちが「音楽で一発当ててビッグになってやる!」とバンドを結成し、夢を追い、分裂していく様子を描く『ザ・コミットメンツ』

アイルランドはとかく主人公の自由を抑圧する、呪われた土地として扱われることが多い。

『ブルックリン』の主人公エイリシュもまた、閉塞的な故郷アイルランドから大都会ニューヨークへやってきた少女。

一時的に深刻なホームシックに悩むものの、最後には

"I’ve forgotten what kind of town this is."

と言い残し、故郷を完全に捨てる覚悟を決めた。

今作ではそんな彼女の内面的な変化を描写する方法として、

衣裳・髪型・化粧など外見的な変化が大きな役割を担っている。

まず衣裳について。

とりわけ序盤、彼女がニューヨークで孤独を感じたり、故郷アイルランドに対する未練を捨てきれない間は、主にグリーンを基調にした衣裳が使われる。

グリーンはアイルランドのシンボルカラーだ。

エイリシュがニューヨークへ旅立つ際にまとう真緑のコートや、

故郷のお姉さんから届いた手紙に涙している時のセーターの色が分かりやすい。

その後。

新しい人々と出会い、スキルアップに取り組むなどニューヨークになじみ始めると、

それに合わせてエイリシュの衣裳も様々に色を変えていく。

特にグリーンの補色である深紅のコートが印象的だ。

エイリシュが恋人トニーとバスに乗るシーンで強調されるのは、

アウターの赤
インナーの青
エイリシュ自身の白い肌

のトリコロール。

つまりアメリカの国旗をイメージさせる色彩設計が施されている。

同じく始めは化粧っ気のない田舎の娘さんだったエイリシュが、

成長と共に洗練された化粧と髪型になっていくのも見どころ。

冒頭とラスト、両方に用意された船のシーケンスが、最も分かりやすく変化を示してくれる。

前者は田舎娘らしくすっぴんにグリーンのコート、

後者は大人っぽい化粧にオレンジのコート、という具合。

衣裳デザインを担当したのは『17歳の肖像』と同じOdile Dicks-Mireaux。

彼女の両親もまた、フランスを離れイギリスに移り住んだ移民だという。

エイリシュの人生を知り、その心情を表すために最適な衣裳を探す仕事は、

自分自身の出自を見つめ直す機会にもなったそうだ。

人生をより良くするために新しい環境で努力している人、

または新しい環境に飛び込もうか迷っている人に、

『ブルックリン』は一抹の勇気を与えてくれるはずだ。

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