映画『二ツ星の料理人』レビュー

映画

作品情報

二ツ星の料理人

(原題:Burnt)

  • 製作:2015年/アメリカ/101分
  • 監督:ジョン・ウェルズ
  • 出演:ブラッドリー・クーパー/シエナ・ミラー/オマール・シー/ダニエル・ブリュール/アリシア・ヴィキャンデル/マシュー・リス/リリー・ジェームズ/ユマ・サーマン/エマ・トンプソン
  • 脚本:スティーブン・ナイト
  • 撮影:アドリアーノ・ゴールドマン
  • 編集:ニック・ムーア
  • 音楽:ロブ・シモンセン

予告編

レビュー

こんにちは、こんばんは。

臘月堂、主人の南(@lowgetsudou)です🌙

レストランを舞台にした群像劇『ディナーラッシュ』を観て

「調理場アクション映画かっこいい!もっとこういうのないか!」

と思っていたところ、思わぬ拾いもの。

プレイヤーの手元が動きの中心となるスポーツ(あえてこう呼ぶ)は、

カメラワークのスピード感と視覚的なインパクトで魅せる作品が多い。

例を挙げれば『ハスラー2』における、テーブル上を駆け回るビリヤードボールの乱舞。

モノクロで撮影された一作目に対し、華やかな絵面はカラー撮影の必然性を強く感じさせた。

そして『ボビー・フィッシャーを探して』における名匠コンラッド・L・ホールの仕事も忘れがたい。

チェスがあたかも丁々発止の剣戟のように描かれ、「動きの少ない競技」というパブリックイメージとのギャップを見せつけた。これは紛れもなくアクション映画だ。

身の回り品を器用に細工して状況を打開する、『ボーン』シリーズおなじみのシーンもその類型に入るだろう。

今作『二つ星の料理人』もまた、矢継ぎ早に現れて画面を彩る華やかなプレートの数々が、魅力の一角を成している。

例えば『マリー・アントワネット』で次々と映し出されるプレート、および華麗な召し物に心が高鳴る方はきっと楽しめるはずだ。

厨房の多忙さは戦場そのものとして描かれ、料理人たちが叫ぶ「イエス、シェフ!」は思わず「イエッサー!」に空耳してしまう。

そして『アメリカン・スナイパー』『世界にひとつのプレイブック』でも顕著だったが、

今作も主人公アダムを演じるブラッドリー・クーパーの

「心に問題を抱えた偏執狂のマッチョ」

演技が光る。

複雑な家庭環境で育ち、人間同士の心の繋がりなど二の次で「完璧な料理を作ること」だけを生きる目的にしている男。

『市民ケーン』を始め、

カネと権力だけを盲目的に追い続ける『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の主人公、

または最高のジャズドラマーになるため人並みの幸福を捨て去る『セッション』の主人公などと近い人物設定だ。

「腕を組む」というアダムの基本の姿勢は、他人に心を開けない人間心理を反映しているようにも見える。

その彼が仲間達との関わりを経て人間らしい心を獲得するという、ストーリー自体は型通りのもの。

しかし上記の映像演出や、

「速く→徐々に遅く→速く」

という交響曲を想起させる編集の妙味など、映画ならではの楽しさに溢れた娯楽作と言える。

休日にリラックスしながら観るには最適の映画。おススメ!

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