映画『ムーンライト』レビュー

映画

こんにちは。臘月堂(@Lowgetsudou)です。

今日は『ムーンライト』の話。

作品情報

ムーンライト

(原題:Moonlight)

  • 製作:2016年/アメリカ/111分
  • 監督・脚本:バリー・ジェンキンス
  • 製作総指揮:ブラッド・ピット
  • 出演:トレヴァンテ・ローズ/ナオミ・ハリス/ジャネール・モネイ/マハーシャラ・アリ
  • 原作:タレル・アルヴィン・マクレイニー"In Moonlight Black Boys Look Blue"[
  • 撮影:ジェームズ・ラクストン
  • 音楽:ニコラス・ブリテル
  • 受賞:第89回アカデミー作品賞/助演男優賞/脚色賞

予告編

レビュー

「自分の道は自分で決めろよ。周りに流されるな」

人間はとかく他者を型にはめたがる生き物。

今作においては、同性愛者を抑圧すること、

および他者から押し付けられた社会的役割で自分を規定してしまう悲しさへの警鐘が静かに鳴らされる。

同性愛者への嫌悪感が宗教的、政治的な問題に直結するアメリカでは、

受け入れられ方が日本とかなり異なるのだろう。

ややもするとシリアスでウェットになりやすい主題ながら、

表現方法はエモーティブすぎず抑制がきいている。

しかも眩しい光や深い青をアクセントにした映像美と相まって、いっそう味わい深い仕上がりだ。

たとえばシャロンの幼年期、少年期、青年期すべてに共通する車での移動シーン。

はじめの2章では助手席に乗っていたシャロンが、

大人になると自分でハンドルを握っている。

さりげなく重要な演出だ。

ドラッグ中毒でネグレクトの母親、幼い自分を捨てた父親、いじめっ子など周囲の人間に流されて育ったシャロン。

その彼がようやく自分で自分の人生の「ハンドルを握り始めた」ことを表しているようで嬉しくなる。

しかし。

その後のシーンで明らかになるように、彼が選んだ道はドラッグの売人。

ことほど左様に、教育や環境が人の人生に与える影響は根が深い。

希望とやるせなさが渾然一体となったストーリーテリング、

人間が背負った宿命

個人の内面と人間関係の変化を三章仕立てで描く構成。

これらの要素に『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』を思い出す。

ゾラは『居酒屋』『ナナ』を代表とする『ルーゴン・マッカール叢書』で

「時代と環境と遺伝が人間の運命を支配する」

と謳った。

遺伝による決定論は含まれないものの、『ムーンライト』もまた『居酒屋』に始まる自然主義文学の傍流とも取れる。

その点では『フロリダ・プロジェクト』『万引き家族』などと比べて鑑賞しても面白い。

また、監督と脚本家が育った街の名はリバティ・シティという。「自由の街」だ。

親友のケヴィンがシャロンにつけたあだ名である"ブラック"も、

街の名と同様に「自由への渇望」を思わせる。

色はたくさんの種類を混ぜれば混ぜるほど、黒に近づいていくもの。

そして黒はどんな色にも惑わされず、同時にすべての色を受け入れる懐の広さを持っている。

黒は多様性や自由を象徴する色なのだ。

一方で白は、ほんの少し違う色を垂らしただけでも目立ってしまい、

居心地の悪ささえ感じてしまう。

美しさと裏腹に、純白に近づくほど、白は神経質さと排他性を増しやしないか。

清濁併せ呑む"ブラック"とは、

寛容さと自由への想いそのものだ。

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