パリピ文化の皮をかぶった『スプリング・ブレイカーズ』という退廃芸術

映画

こんにちは。臘月堂(@Lowgetsudou)です。

今日は『スプリング・ブレイカーズ』の話。

作品情報

スプリング・ブレイカーズ

(原題:Spring Breakers)

  • 製作:2012年/アメリカ/93分
  • 監督・脚本:ハーモニー・コリン
  • 出演:ジェームズ・フランコ/セレーナ・ゴメス/ヴァネッサ・ハジェンズ/アシュレイ・ベンソン/レイチェル・コリン/グッチ・メイン
  • 撮影:ブノワ・デビエ
  • 編集:ダグラス・クライズ
  • 音楽:クリフ・マルティネス/スクリレックス

予告編

"スプリング・ブレイク"とは

朝から晩まで歌って踊ってパーティーざんまい、お酒飲んではハッパ吸い、ハッパ吸ってはお酒飲み、フロリダの開放的な海と空の下で酒池肉林の乱痴気騒ぎに興じる。

そんなスプリングブレイク(春休み)を楽しむことが、若さとフラストレーションを持て余したアメリカの学生たちにとって、理想的な休暇の過ごし方の一つだそうだ。

(スプリングブレイク文化についてはこのサイトに詳しく書かれておりとても勉強になる)

あらすじ

主人公は、退屈な日常に耐えきれなくなった4人の女学生たち。

青春を地元というドブに捨てたくない4人は、フロリダに出かけスプリングブレイクを過ごすことを決意。

しかし現実は甘くない。金策に励むもなかなか旅費は作れそうにない。

そこで彼女たちは、あろうことかレストランに強盗に入る。

水でっぽうで店員やお客を脅しつけ、お金を強奪する事にまんまと大成功。

一路フロリダへ向かった4人は、晴れて先述したようなパーティー三昧に突入。

しかし、あまりにハメを外した彼女たちは警察に見つかりお縄を頂戴してしまう。

拘置所で悲嘆にくれているところ、どう言うわけか「あんたたちもう出ていいわよ」とシャバに出る許可が下りた。

彼女たちの様子をたまたま見ていた謎の男が、気前よく保釈金を払ってくれたのだ。

男の名は”エイリアン”(ジェームズ・フランコ)。

地元でドラッグの売人とラッパーをやっているならず者で、金だけはうなるほど持っているチンピラだ。

エイリアンに気に入られた4人は、彼に連れられフロリダの ”裏の世界” に足を踏み入れてしまう…

レビュー

キービジュアルから

「なんだかチャラそうな映画だな!」

「自分の人生とは一生縁のないパリピがオラついてる内容かな」

とは思ったものの、

「でもカラフルで楽しそうだな!」

と思って観始めたら、先入観とは真逆のダークさを孕んだ内容で驚いた。

物語の大筋については、

前半が

「少女が夢を見て訪れた土地で理想と現実のギャップに打ちのめされる」

後半が

「楽しい思い出づくりを目的とした旅は、いつしか暴力と欲望に満ちた惨劇に」

と言うもの。

とはいえ、本作で注目すべきは何より映像と音楽だ。

冒頭のビーチパーティーを始め、パリピの若者達がEDMをガンガンかけながらはしゃぎ倒す光景は確かに何度かある。

ただしメインとなるのはどこか不安で、焦燥感を煽る、断片的なシーンの数々だ。

ニコラス・ウィンディング・レフン作品を多く手がけるクリフ・マルティネスによる不穏なスコアや、うら寂しいアンビエント。

それらの音楽に乗せて訥々と語られるナレーション、少女から地元の家族への電話の声。

スローモーションとフィルターがかった音声。

フロリダの暑さを忘れさせるようなそれらの不気味で冷たい空気感が、

「この楽しい時間はいつか最悪のカタストロフで終わりを迎える」

と予感させるのだ。

だからこそ、極端に軽佻浮薄なパーティーシーンが観客にはミスマッチに映り、居心地の悪い気分を演出する。

緊張感が続く中で唐突に無理やりなほど明るいシーンを挟むという、なかば露悪的な演出は日本だと中島哲也監督も好む手法である。

私はこの厭〜な感覚がたまらなく好きなのだ。

特に思わず見惚れてしまうオレンジ色の夕暮れにブリトニー・スピアーズのバラード "Everytime"が重なる映像と、

エイリアンと少女達が敵対するギャングのアジトに押し入り殴る・蹴る・銃で脅す凶行に及ぶ映像をカットバックさせるシーンが今作の白眉だ。

撮影監督ブノワ・デビエによる暗闇とネオンを強調したコントラストの強い映像は、彼が手がけた『ロスト・リバー』『エンター・ザ・ボイド』などと同じくドラッギーな中毒性がある。

彼は長編映画の撮影監督をやる前に、短編映画や企業CMなどで活躍していた。

特にCMは数十秒〜数分という極めて限られた時間で購買者に強烈な印象を与える必要があるため、物語性よりもインパクトのある画づくりこそが鍵となる。

その経験が存分に活かされているのが『スプリング・ブレイカーズ』だと言える。

彼の近年の仕事で言うとPRADAの広告映像も素晴らしい。

また、ブノワ・デビエは2010年にフローリア・シジスモンディ『ランナウェイズ』で一緒に仕事をしている。

シジスモンディはマリリン・マンソンや90年台半ばのデヴィッド・ボウイを始め、退廃的な美学をたたえた映像作りを得意とするミュージックビデオ作家。

ブノワ・デビエもミュージック・ビデオの監督をやったらきっと面白いことになると私は期待している。

そして終盤、何のためらいもなく暴力を行使するモンスターと化す2人の少女の描写も圧巻だ。

そこには『テルマ&ルイーズ』の2人のような叙情性はなく、『ノーカントリー』のシガーや『ディストラクション・ベイビーズ』の柳楽優弥、ひいては『ヒメアノ〜ル』の森田剛が見せたのと同じ、むき出しの獰猛性が転がっている。

『ドライヴ』『オンリーゴッド』を始めレフン監督作品、

デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督による、夜の闇と水の揺らめきが印象的な『アメリカン・スリープオーバー』や青春ホラー『イット・フォローズ』

などなども併せてオススメしたい。

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