映画『ロブスター』レビュー

映画

作品情報

ロブスター

(原題:The Lobster)

  • 製作:2015年/ギリシャ・フランス・アイルランド・オランダ・イギリス/118分
  • 監督:ヨルゴス・ランティモス
  • 出演:コリン・ファレル/レイチェル・ワイズ/レア・セドゥー/ベン・ウィショー/ジョン・C・ライリー/オリヴィア・コールマン
  • 脚本:ヨルゴス・ランティモス/エフティミス・フィリップ
  • 撮影:ティミオス・バカタキス
  • 編集:ヨルゴス・モヴロプサリディス

予告編

レビュー

こんにちは。臘月堂(@Lowgetsudou)です。

「もしも独身でいることが罪で、罰として動物に変身させられる世界だったら?」

というハイコンセプトなお話。

J・G・バラードなどのニューウェーブSF小説にありそうな設定です。

「理不尽な抑圧を人々に強いる支配者に牛耳られた社会」

という世界観のディストピア作品は『華氏451』『わたしを離さないで』『リアル鬼ごっこ』など色々ありますが、『ロブスター』もその系譜。

お話は主人公の中年男性が奥さんに振られるところから始まります。

主人公を演じるのはコリン・ファレル。

しょぼくれた表情がこの役にピッタリです。

彼は離婚後すぐお役人にしょっぴかれて、「今日からここに住みなさい」とホテルにぶちこまれます。

ホテルでは自分と同じく伴侶のいないやもめ男女が沢山。

みんな浮かない顔で、しみったれた暮らしを送っています。

45日以内にパートナーを見つけなければ、みんな動物に変えられるという仕組み。

実情はホテルというより強制収容所で、ナチスのユダヤ人迫害を彷彿とさせます。

独身者を動物に変身させる部屋はさしずめガス室。

捕まった独身者は時折ホテルの外に出かけ、

逃亡中の独身者達を猟銃(麻酔銃)でふん捕まえる仕事を与えられます。

独身者を1人捕まえるにつき1日、動物に変えられる刑の執行猶予が伸びる褒美がもらえます。

みんな必死に独身のお仲間を追っかけ回すわけです。

これも何だか、ナチスの命令で同胞を殺したり遺体の処理をさせられていたゾンダーコマンドみたいでやるせない気分になりますね。

『サウルの息子』を思い出しました。

こう書いてると暗〜い話に思えますが、

ブラックユーモアのきいた演出が隅々まで行き届いていて、何ともひねくれたコメディ映画に出来上がってます。

流れる音楽も不穏なストリングスだったり侘しいシャンソンだったり。

でも脚本のおかげでほろ苦い笑いが漏れてくる。

『ブルージャスミン』観てる時もこんな気分でした。

独身者ホテルに滞在する主人公の仲間のうち、ジャガイモ顔のジョン・C・ライリーの演技がとりわけ素晴らしい。

ぎこちないダンス、どこか間の抜けた受け答え、顔芸など、ジョン・C・ライリーらしい「冴えない中年男性」演技がたくさん。

『マグノリア』『ハードエイト』『おとなのけんか』などでも同様のしょぼくれおじさん演技が光っていましたが、

『ロブスター』のジョン・C・ライリーも「この役をやるの彼以外に考えられない!」というナイスキャスティング。

森の中でパンツ一丁で寝そべるシーンなんか『脱出』のネッド・ビーティみたいで、わびしさが溢れ出ていて特に良い。

(ポール・ジアマッティとか、ジョン・グッドマンとか、ジョン・ファヴローとか、フィリップ・シーモア・ホフマンとか、太った中年のおじさん俳優に惹かれてやまないんですよ)

映画のちょうど半分からは舞台も登場人物もガラリと変わり、違うテイストの映画になっていきます。

主人公が「やってられん!」とホテルから逃げ出して、近所の森に駆け込むんですね。

すると森の中には、役人の追跡を逃れて共同生活を送る独身者の集団がいました。

主人公も「かくまってやる」とのことで、加入させてもらえて一安心です。

しかしその集団には

「恋愛厳禁」
「イチャイチャしたら血の制裁を下す」

という鉄の掟がありました。

ここはここで息苦しい世界。

集団を取り仕切る冷血の女リーダーがレア・セドゥーで、彼女もいい演技をしていますね〜〜。

クールで強い女リーダーと言えば

『風の谷のナウシカ』のクシャナ、
『怒りのデスロード』のフュリオサ、
メリル・ストリープが演じたサッチャー首相

などが思いつきますが、今作のレア・セドゥーもツーンとすました厳しい表情が役によく合ってます。

主人公はこの集団で知り合ったレイチェル・ワイズとデキちゃうんですが、

従来とは一転。付き合ってることを必死で隠さなきゃなりません。

バレたら厳罰。

2人は無事に関係を隠し通せるのか。

このまま森の中で悶々と不自由に暮らし続けるのか。

最後の最後に主人公が下した決断と行動は、観てて気絶しそうになりました。

それはもう、『127時間』を観た時と同じに。

必要最低限の編集とムダのないカメラの動き、

人物の細かい視線や所作、

オフビートな笑い、

などなど見るほどに味わいの増す映画です。

おススメ!

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