映画『トニー滝谷』レビュー

映画

作品情報

トニー滝谷

  • 製作:2005年/日本/75分
  • 監督・脚本:市川準
  • 出演:イッセー尾形/宮沢りえ
  • 原作:村上春樹『トニー滝谷』
  • 撮影:広川泰士
  • 編集:三條知生
  • 音楽:坂本龍一

レビュー

こんにちは、こんばんは。

臘月堂、主人の南(@lowgetsudou)です🌙

「幻想しか愛せない男」という、『めまい』や後年の『ファントムスレッド』にも通じる設定の主人公を、イッセー尾形が好演。

アイデンティティの喪失、
自分探しブーム、
ブランド品の大量消費による自我の糊塗

など、原作が発表された80年代〜90年代の転換点における日本の空気がよく表れているところも特筆すべきだ。

誰かがあらかじめ用意した「服」という、文字通りお仕着せの美意識で自分らしさを飾りたてようとする妻の虚しい営みに、時代性が凝縮されている。

対してイラストレーターのトニーは高い技術を持つものの、写実性を突き詰め、作品から彼自身の人格や個性を剥奪するという性向を持つ。

「作品に自分の思想や個性を込めるなど、洗練された表現方法ではない」
とまで述懐する。

"没個性"という概念をシンボル化したようなトニーの人格は、同じく80年代に脚光を浴びた「コンクリート打ちっぱなし」のモダニズム建築物を彷彿とさせる。

孤独や焦燥感は物質など外的な要因では決して埋められない。

『アメリカン・サイコ』『ファイトクラブ』などでも裏に表に語られた主題が、静謐さに満ちた演技、音楽、カメラワーク、編集でアレンジされた傑作である。

今作の登場する奥さんと真逆の生き方を扱った『ミニマリズム』という映画もレビューしてます↓

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